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難病 パーキンソン病 家内と共に生きる。

パーキンソン病 介護・症状日誌

Fushimi-ku Kyoto city

さまざまな気づき・知見・レポートSerendipity PD other report



パーキンソン病 様々なひらめき・気づき・知見

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介護を通して症状、薬、脳、神経細胞、神経の仕組み、症状のメカニズムなどの慰問が生まれてきます。また、近年、パーキンソン病(PD)の研究発表も数多く少しずつ解明してきました。
パーキンソン病に関する様々な疑問、チャレンジ、思い、経験したことを紹介します。
ADL(日常生活動作)、QOL(快適な生活環境)の向上、治癒を目指して。

   パーキンソン病(PD)の
    知見を広げることにより不安・心配事が解消。



さまざまな気づき、ひらめき、チャレンジ・知見。


   (詳細は、下線部分をクリック)

 ⓾様々な要因による”幻視”

 ⑨ 痛みを和らげるオキシドシン

 ⓼ 睡眠と覚醒

 ⑦ 心不全症・肺炎・胸水の顛末

 ⑥ PD・オートファジーの関係

 ⑤ PDD・DLBの大脳皮質萎縮

 ④ PD・ADの脳部位の萎縮

 ③ PD・新手法遺伝子治療

 ② ドーパミン量をコントロール

 ① 所見が大切さ!! 


様々な幻視

様々な幻視!!

原因疾患により幻視が異なるようです!!
薬剤性(ド-パミン供給が多い時の幻視)と脳部の疾患での幻視は異なるようです。
すべて神経伝達物質の量によるものと考えます。
PD患者では、小さい虫が、小さいごみが、小人さんが見えるようです(原因は薬剤性)。
レビー小体認知症では、人が見える、錯覚がが多いようです。
 タイプ  誘因  見え方 特徴  原因疾患 
入眠時の幻視 傾眠
REM睡眠 
明瞭、
不明瞭 
話す ナルコレプシ-
統合失調症
REM睡眠行動異常
夢遊病
傾眠
REM睡眠 
不明瞭 話さない  シヌクレイノバ-チ
変性疾患
薬剤性
鮮明な幻視 覚醒時  極めて鮮明 話す
触れようとする 
レヴィ小体認知症
大脳基底核変性症
受容体活性(薬剤性)





オキシドシン

痛みを和らげるオキシドシン

慢性的な痛み(リュウマチ、パーキンソン病等)を緩和する神経伝達物質のオキシドシンが慢性的な痛みを緩和することが判ってきました。また、認知症の悪化を防ぐ効果もある。
痛みやストレス状態になると偏桃体(脳部位)が興奮。興奮した偏桃体を前頭前野が鎮めますが、痛みとストレスが継続的に起こる場合偏桃体が興奮しっぱなしになると痛みが増幅され血圧上昇、不眠、一時記憶が保持できなくなります。このような場合、オキシドシンの分泌を促進させることにより偏桃体の興奮を鎮静化できます。
では、どの様にオキシドシンを分泌させればよいのでしょうか?
オキシドシンは、視床下部から分泌されるホルモンです。体を触れることにより触れた感覚が脳に伝わりオキシドシンを分泌されます。また、触れた側にもオキシドシンが分泌されます。

子供のころ痛いところに母親から手でなでられたら痛みが無くなったと言う経験はないでしょうか?

下記に触覚で痛みが改善されたタッチケアーの例を記します。
 ・血圧低下症:背中のマッサージ(両手のひらで背中をさする)を10分間 x 週3回。
 ・認知症: 腕のマッサージ(さする)毎日10分間 x 1週間。
 ・リュウマチの痛み:背中のマッサージ(両手のひらで背中をさする)を10分間 x 週3回。

触れる、触れられるという行動が、睡眠薬、降圧薬、鎮痛剤、抗不安薬、認知症の改善に期待されます。
(触れられる相手が信頼できる相手であることが前提です)

また、信頼できる人の声を聞くだけでもオキシドシンが分泌され安心感が生まれます。


          furerukannkaku




オレキシン

睡眠と覚醒

睡眠・覚醒に対しては不明点が多く現在科学でも解き明かされていませんが、神経伝達物質のオレキシンが関係していることが判ってきました。
睡眠には、視床下部で分泌されるオレキシンが覚醒を促すことに関わっている。
 a) オレキシンの分泌が多いと覚醒中枢(覚醒系の神経細胞群)が活性化して覚醒。
 b) オレキシンの分泌が少ないと睡眠中枢が活性化して睡眠。

オレキシン分泌メカニズムは不明ですが、遺伝子が関わっているのではないかと推測されています。
(遺伝子の特定まではされていません)

suimin

睡眠薬(従来型)は、脳全体の興奮を抑え睡眠に導きますが、スポレキサント(選択的デュアルオレキシン受容体拮抗薬)は、睡眠覚醒のメカニズムに作用すると考えられています。(2014年9月26日、日本で承認され不眠症の睡眠薬)


睡眠と脳磁図
神経細胞の電気活動に伴って生じる磁場を観察する脳磁図(のうじず、
Magneto EncephalogramMEG)により睡眠を分析。

 

基礎律動をつくる波形

 

α波
頭部後方部分に覚醒時出現する8Hz - 13Hzの律動であり、精神的に比較的活動していないときに出現する。注意や精神的努力によって抑制、減衰する。
加齢により徐波化する傾向がある。α波の発生説にはいくつか存在するが、Andersenらの仮説では皮質のα波は視床からの入力によるものであり、視床におけるペースメーカーが皮質リズムを形成し、視床の反回性抑制 ニューロンがリズムの周波数を作っているとしている。Nunezらの説では皮質と皮質間を結ぶ長い連合線維によって生じるとされている。

 

β波
14Hz
以上の律動を示す。30Hz以上でγ波と分類することもある。もっともよく認められるものは前頭部から中心部に記録される。多くは30μV以下である。その起源は扁桃体や海馬が考えられているが明らかになっていない。

 

θ波
4Hz - 8Hzの律動を示す。α波が徐波化して出現する場合は後頭葉優位であり、傾眠時は側頭葉優位に出現する。

 

基礎律動:
ほぼ全般性、持続性に出現し、脳波の大部分を形成する特定の脳波活動を基礎律動(背景脳波)という。基礎律動は覚醒度、年齢、薬物によって変化し、基礎律動が異常をしめす病態もある。基礎律動には周波数帯域ごとに名前が付けられており、それぞれ異なった生理学的な意義を有している。

名称 読み 周波数帯域

δ

デルタ波

1-3Hz

θ

シータ波

4-7Hz

α

アルファ波

8-13Hz

β

ベータ波

14-Hz


睡眠時脳波


睡眠段階 特徴的波形
stage W     α波
stage 1      α波の減少、V波(hump
stage 2      睡眠紡錘波(spindle)K複合波
stage 3     δ波(20% - 50%
stage 4      δ波(50%以上)
stage REM低振幅脳波に急速眼球運動(REMs)が出現する

 

中脳網様体―視床―皮質の連絡によって波形の成り立ちは説明される。睡眠が深くなると中脳網様体、視床、皮質の順に求心性支配が順次減少すると考えられている。

 

覚醒段階(stage W

閉眼覚醒ではα波のほか、高振幅の持続性筋電図、急速眼球運動(REMs)や瞬目もしばしば出現する。このα波は皮質―皮質間の神経路で発生すると考えられている。

 

睡眠第1段階

まどろみ期、入眠期といわれる。うとうとした状態である。覚醒時に認められたα波の連なりはリズムを失い徐々に平坦化してくる。低電位の徐波、即ちθ波が不規則に出現しβ波も混ざる。α波が覚醒期の50%以下になると睡眠第1期とする。第一段階の後半になると頭蓋頂鋭波(humpまたはV波)が出現する。頭蓋頂鋭波は左右頭頂葉優位の鈍く尖った高電位の徐波である。中脳網様体からの視床や皮質への求心性入力が減少することでα波の形成は減少すると考えられている。

 

睡眠第2段階

軽い寝息を立てるくらいの状態である。睡眠紡錘波(spindle)とK複合波(K complex)が出現する。睡眠紡錘波は頭頂部に出現する12Hz - 14Hz程度の波形である。K複合波は頭蓋頂鋭波に似た二相性ので高振幅の徐波とそれに続く速波で構成される複合波である。睡眠紡錘波は網様視床核がペースメーカーとなり、それが皮質に投射される、視床―皮質回路で形成されている。中脳網様体の求心性入力が減少することで視床―皮質の神経路が独立性をもち睡眠紡錘波を形成するようになる。

 

睡眠第3段階

2Hz以下で頂点間振幅が75μV以上の徐波(δ波)が、20%以上50%未満を占める段階である。かなり深い睡眠でありよほど強い刺激でないと知覚されない。通常の脳波検査ではこの段階までいくのは稀である。第3段階と第4段階を合わせて徐波睡眠という。視床からの求心性入力が減少することで皮質が独立性をもち多形性のδ波を形成する。

 

睡眠第4段階

2Hz以下、75μV以上の徐波(δ波)が50%以上を占める状態である。

 

REM睡眠

上記の睡眠段階は主にノンレム睡眠である。レム睡眠は脳波に睡眠第一段階に類似した低振幅パターンが出現すること、急速眼球運動(REMs)が出現すること、身体の姿勢を保つ抗重力筋 筋緊張低下を三徴とする。脳波のみでは睡眠第1段階とレム睡眠の区別は困難である。ナルコレプシーの患者では覚醒時から急速にレム睡眠に移行する。また、レム睡眠中に刺激を与え、起こすと夢を見ていたと述べることが多い。


 

意識障害の脳波

 

軽度の意識障害

意識が清明な場合は開眼によってα波が抑制されるが、眠気があり軽い意識混濁が認められると開眼してもα波は持続して現れる。

 

中等度の意識障害

低振幅脳波や広汎性徐波を示す。音刺激などで脳波が反応することがあり、この場合は回復の可能性がある。

 

高度の意識障害

θ波などの他に、三相波、PLEDssuppression-burst,α-comaなどが認められる。
 




心不全の顛末

心不全・肺炎・胸水 発病の顛末

(2015年11月29日)
2015年11月13日より心不全症・肺炎・尿路感染症のため11月28日まで緊急入院。
心不全症・肺炎・尿路感染症の症状が出現した顛末に付いて考えてみた。
2~3ヶ月前より両足首のむくみ(下肢浮腫)がみられパーキンソン病により運動不足と考えた。
以前、今回よりひどい下肢浮腫になり循環器内科で薬物治療を行った経緯があり少しのむくみだったので様子を見ていた。また、床に入ると咳き込みが11月1日頃よりおこり、アレルギー性??風邪によるものと考えていた。体温は平熱。(10月21日血液検査異常なし、11月4日エコー検査異常なしであった)

血液検査数値
  項目/日 白血球数  NT-proBNP CRP値 
 10/21   4,900  ー    0.12
 入院時  12,700  3,363  6.43
 11/18  7,200  260  2.9
 11/24   4,900  244  0.42
 正常値  3,500 - 9,100  3,500 - 9,100  0.30=>

*BNP値:
心臓に負荷が加わったときに心臓から分泌されるホルモンで、心臓への充満圧(心房圧)、心室拡張期圧が高くなると上昇。

*CRP値:炎症や感染の指標。

血液検査の結果から10月21日の段階では炎症や感染の指標は正常。
10月21日以降に細菌・ウイルスに感染して肺炎を発症。肺炎発症したことにより血液中に細菌が侵入して心臓内部に付着により細菌性心内膜炎(弁膜症)を発症、しかし、数ヶ月前より両足首ににむくみがあったため心臓
の三尖弁(大静脈からの血液を右心房⇒右心室の弁)機能が弱く下肢浮腫に成ったと考えられ、体重も増えたとの事から数ヶ月前より胸水が溜まっていたと考えられる。その頃より心不全があったのでは?と推測。

心不全症の出現症状
尿量が減る、体重が増える
むくみ
息切れ
・夜間まっすぐ寝ると息苦しい、消化器症状。
食欲低下、吐き気、消化不良、身体がだるい、肝臓の辺りが重い
せきが出やすい
・たんが出やすい。
腹痛、腰痛。(赤字が思い当たる症状)

不整脈は、胸膜腔内に異常に多量の液体が貯留(漏出性胸水)が発生し、心臓に負担がかかり肥大して僧帽弁(肺静脈からの血液を左心房⇒左心室の弁)が若干の機能低下により不整脈と成ったと推測。

肺炎(肺胞性)発症は、10月21日以降に細菌・ウイルスに感染したと考えられる。
感染源は、誤嚥性によるものかもしれない。

今回の心臓弁膜症(三尖弁の閉鎖不全症)を起こした要因の一つは、肺炎により血液中に細菌が侵入して心臓内部に付着し細菌性心内膜炎によりとも考えられるため今後も心不全、不整脈の原因を調べなければならないと考える。

a)下肢浮腫の原因。
 ①肝臓と腎臓のアルブミン蛋白質の不足。
 ②心臓障害と下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)。
 ③運動不足。 
 ④長時間の立位・座位。が考えられている。
前回は③④と考えられ、今回は②と考えられる。

b)胸水の原因。
 ①漏出性胸水は、
  心不全:74%、肝硬変:11%、ネフローゼ:9%、
  低アルブミン:6%、の疾患より。

 ②滲出性胸水は、
  悪性腫瘍:42%、結核:25%、肺炎:18%、
  の疾患より。

胸水液の成分分析は行っていないが、軽度の心不全症(漏出性胸水が)があり、その後、肺炎(滲出性胸水が)により胸水が溜まったのではないかと考えられる。

c)心不全症の原因。
 ①虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞・動脈硬化など)
 ②動脈硬化
 (高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満が危険因子)
 ③心筋症。
 ④弁膜症。
 ⑤不整脈。
 ⑥甲状腺機能亢進症。
 ⑦ウイルス感染(HIVなど)
 ④⑤が起り心不全症になったと考えられる。

d)肺炎の原因。
①肺胞性肺炎:
 病因微生物などにより起る肺炎。(細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア
 肺炎、真菌性 (しんきんせい)肺炎、寄生虫肺炎)

②間質性肺炎:肺の間質(肺の空気が入る部分)を中心に炎症を来す疾患(原因不明)。

①が起ったと考えられる。

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 PDとオートファジー

パーキンソン病とオートファジーの関係

(2015年09月27日)
パーキンソン病の原因の一つとして、脳内の黒質緻密部から線条体被穀への神経伝達物質のドーパミンが減少
する事で起こるとされています。ドーパミンの減少は神経細胞内の不良ミトコンドリアにより変性、脱落すると
解ってきました。また、α-シヌクレインの凝集(レヴィ小体)が神経細胞内に蓄積する事によりその脳部位が
機能不全を起こすとの説もあります。両説とも神経細胞内の機能不全によるもので、小器官、蛋白質の蓄積がら
なる原因と考えられます。
東京都医学総合研究所 松田憲之氏によると、不良ミトコンドリアでパーキン蛋白質がどの様に働いているかを
研究したところ、PINK1蛋白質が不良ミトコンドリアの集まり、その後パーキン蛋白質が集まり、PINK1と
パーキンが協力してユビチキン(リン酸化)、オートファジー作用を起こす事が解明されました。

オートファジーを活性化できる薬が開発出来れば治療薬として期待が出来ます。

用語解説

オートファジー
細胞内のタンパク質を分解するためのメカニズム。オートファジー機能は以前より知られていましたが
東京工業大学 大隅良典 栄誉教授らによって詳細が解明されました。

不良ミトコンドリア
ミトコンドリアは細胞小器官の一つで主要な機能は電子伝達系による酸化的リン酸化によるATPの産生
(ADPのリン酸化)。細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーのほとんどは、直接、あるいは間接的に
ミトコンドリアからATPの形で供給される。
不良ミトコンドリアとは、エネルギー変換する時に神経細胞にダメージさせる活性酸素を多く出す機能
不全ミトコンドリアを指しています。

レヴィ小体
神経細胞の内部に見られる異常な円形状の構造物(封入体)で、α-シヌクレイン蛋白質の凝集。
レヴィ小体は、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、アセチルコリンを分泌する神経細胞に好発
する事が解っている。その他、青斑核、迷走神経背側核、末梢の自律神経節にも好発する。

α−シヌクレイン蛋白質
神経細胞に局在しシナプスの可塑性や神経伝達物質の調整などを行っている蛋白で、その異常蓄積により
パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、レビー小体型認知症(DLB)が発症する。

PINK1・パーキン蛋白質
・PINK1蛋白質(タンパク質リン酸化酵素)は、Parkin(ユビキチン連結酵素)が膜電位を失った異常
 ミトコンドリアを不良品として処分する役割を担っている。

・パーキン蛋白質は、プロテアソームで分解される基質蛋白をユビキチン化し、神経細胞死を抑制する
 ので、パーキン蛋白は、神経保護的に作用している。


ユビキチン蛋白質
アミノ酸からなる蛋白質で、不要なタンパク質の除去を始めとして、DNA修復、シグナル伝達など多彩な
機能を持っている。解りやすく言うと不要な蛋白質であると印のタンパク質で、この印が付いた蛋白質は
膜で包まれ(オートファゴソーム)さまざまな分解酵素を含んだリリソームと融合して分解される。




 PDD・DLBの大脳皮質の萎縮

PDD・DLBの大脳皮質の萎縮

(2015年09月27日)
脳の委縮に対して「パーキンソン病およびレヴィ小体型認知症における灰白質萎縮」の研究発表が有ったので要約し紹介したい。

レヴィ小体型認知症(DLB)およびパーキンソン病に認知症を伴う(PDD)における皮質萎縮のパターンを明らかにするため、voxel-based morphometry(VBM)を用いた研究を行った。
患者54例(PDD 15例、DLB 18例、アルツハイマー型認知症(AD)21例)および対照健常高齢者20例の計
74例を対象として三次元T1強調MRIを撮り、画像をVBMを用いて解析した。

側頭葉、頭頂葉、および後頭葉における皮質の萎縮は、
PDDに比べDLBのほうが顕著であった。
PDDに比べてAD群では、扁桃体を含む両側側頭葉における灰白質濃度の低下がみられた。
DLBに比べてAD群の患者では、側頭葉および前頭葉が萎縮していた。
認知症の重症度は同程度であるにもかかわらず、DLB患者における皮質の萎縮はPDD患者に比べて顕著であり、2つの症候群の認知症の根底にある脳基質が異なっていることを示している。DLBとPDD間の微妙な臨床的
および神経生物学的差異を報告したこれまでの研究とともに、われわれの知見は、PDDとDLBは同一疾患では
なく、レヴィ小体病スペクトルの2つのサブタイプであるとの仮説を支持している。

レヴィ小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症とともに三大認知症の認知症であり、コリン賦活薬が有効である可能性が高いことが判明したことでドネペジルが治療薬として用いられている。本論文での結論は、VBMによりPDDとDLBにおける脳皮質の相違点を指摘し、どちらもレヴィ小体病に属するが、別個の疾患である可能性を示しています。

私見ではあるが、PD、BLDの共通項はα-シヌクレインの凝集であり脳部位、神経核の神経細胞内に蓄積した
量により各々の症状が顕われるのではないかと考える。
Braak仮説が有力な説ではないかと思う。
また、PDとオートファジーの機能低下が関係が強いと言われて不良ミトコンドリアの処理を含むレヴィ小体が
関係していると考えられている。オートファジーを活性化する薬が開発されればPD、レヴィ小体認知症の完治
も夢では無いかもわかりません。

用語解説

灰白質
灰白質(かいはくしつ)は、大脳や小脳では表層を占め、大脳皮質や小脳皮質とよばれている。

レヴィ小体
神経細胞の内部に見られる異常な円形状の構造物(封入体)で、α-シヌクレイン蛋白質の凝集。
レヴィ小体は、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、アセチルコリンを分泌する神経細胞に好発する事が解っている。その他、青斑核、迷走神経背側核、末梢の自律神経節にも好発する。

α−シヌクレイン
神経細胞に局在しシナプスの可塑性や神経伝達物質の調整などを行っている蛋白で、その異常蓄積によりパーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、レビー小体型認知症(DLB)が発症する。

Braak仮説
2003年 臨床病理的研究で発表した、Heiko Braak(ドイツの病理学者)のBraak仮説。
抗α-シヌクレイン抗体を用いて高齢者の中枢神経系におけるLewy小体(レヴューしょうたい)の分布を詳細に検討。まず嗅球に出現、迷走神経背側核(延髄)、視床と、その後、下部脳幹(橋)、中脳黒質、扁桃体へ上行進展して、さらに前脳基底部(basal forebrain)、側頭葉皮質、大脳新皮質へと上行拡大して、運動症状、精神症状など様々な非運動症状に関係すると考えられている。
嗅粘膜と腸管の上皮から病原体(neurotropic pathgen)が侵入して、Lewy小体を形成してパーキンソン病を起こすと言う仮説。

オートファジー
細胞内のタンパク質を分解するためのメカニズム。オートファジー機能は以前より知られていましたが
東京工業大学 大隅良典 栄誉教授らによって詳細が解明されました。




 PD・ADの脳部位萎縮

PD・アルツハイマー認知症の脳部位萎縮(2015年09月12日)

大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座(神経内科学)の望月秀樹教授によると、アルツハイマー病(AD)は、その神経細胞の減少によって海馬から始まり前頭葉が萎縮する。
パーキンソン病(PD)は、ドーパミン神経細胞が減少しても、黒質のある中脳は萎縮しない。特異的にドーパミン神経細胞が減少で、黒質のある中脳の萎縮にまで至らない。
また、大脳皮質から線条体に投射するグルタミン酸作動性の神経終末部において、α-シヌクレインの集積が起こることを発見。しかしながら、PDで障害を受ける黒質から線条体に投射するドーパミン作動性の神経終末部には認められ無かった。
これらのことから、SNARE複合体の機能障害が α-シヌクレインの集積・凝集に関与すること、ならびに発現は神経細胞の種類によって異なることがわかったことを米国神経科学学会誌(Journal of Neuroscience)に平成24年11月28日に研究発表した。

PDでは、運動症状以外に便秘、心臓の交感神経の異常(MIBGの集積)、夜中に大声を出したり、明瞭な寝言、REM睡眠行動異常症、嗅覚低下、うつ状態、不眠などが見られる。
治療は、不足するドーパミン補充や分泌促進、ドーパミン受容体の刺激、アデノシンA2A、ムスカリン受容体の遮断薬の処方が行われる。しかし、運動症状以外の症状には効果が見られず、便秘などはかえって悪化する。
脳の黒質のドーパミンの分泌が減ることで、PDの症状が説明できない。
ドーパミンの減少は、α―シヌクレインの異常な蓄積が原因である可能性が考えられています。
Braak仮説では、腸管の神経に蓄積して便秘を、嗅覚の神経に蓄積して嗅覚低下を、それぞれ起こすと指摘されている。現在では、αーシヌクレインが体のいろいろな神経に蓄積されることが、パーキンソン病の原因の可能性が高いと考えられています。
新しい治療方法として薬があまり効かない本態性振戦やPDの振戦(ふるえ)に対して、近々集束超音波療法。(MRIを見ながら超音波を集め、脳治療を行う)の治験がスタートしようとしていると述べています。

と言う事は、
黒質緻密部の細胞が変性、死滅・脱落では無いため萎縮はしないことから、線条体被穀へドーパミンを投射する神経細胞は、正常でグルタミン酸作動性の神経終末部において、α-シヌクレインの集積が起こることを発見されたので、グルタチオン点滴療法は有効と考えられるのではないか??。
α-シヌクレインの凝集を分解する機能のオートファジー、ユビチキン・プロテアソームの正常化がkeyと成るのではないか??。
精神症状、自律神経症状、交感神経症状の出現のメカニズムの究明が待たれるが、運動症状に関しての完治が見えてきたように感じる。

用語解説

SNARE複合体
前シナプスからの神経伝達物質の放出に中心的な役割を担うVAMP-2、SNAP-25及びSyntaxin とよばれる SNARE蛋白質から構成される蛋白質複合体。神経伝達物質を含むシナプス小胞膜上のVAMPとシナプス前膜に存在するSNAP-25及びSyntaxinがSNARE複合体を形成し、小胞とシナプス前膜との融合が生じることにより、神経伝達物質が放出される。

α−シヌクレイン
神経細胞に局在しシナプスの可塑性や神経伝達物質の調整などを行っている蛋白で、その異常蓄積によりパーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、レビー小体型認知症(DLB)が発症する。

ドーパミン受容体の刺激
ド-パミン受容体は、D1、D2、D3、D4、D5受容体と5種類あるとわかっています。
ドーパミンが受容体と結合すると神経細胞に電位変化が起こったり、細胞内の情報伝達系が動いてさま
ざまな変化を起こします。容体刺激薬には麦角系、非麦角系があります。

アデノシンA2A受容体の遮断薬
アデノシン受容体は、A1, A2A, A2B, A3がある事が知られています。
アデノシンA2A受容体はアデニル酸シクラーゼ促進性のGたんぱく質(Gs)と共役するGPCRで、線条体や大脳皮質、海馬、冠血管、肺、血小板など生体内の幅広い部位に分布している。その生理機能は神経活動の制御、血管拡張、内蔵平滑筋の弛緩(しかん、ゆるむ事)など多岐に渡ります。
アデノシンA2A受容体の拮抗剤がパーキンソン病などの神経変性疾患に対する効果が正式に認められ、2013年5月に薬物名:イストラデフィリン。商品名:ノウリアストが販売された。

ムスカリン受容体の遮断薬
アセチルコリン受容体の1つに分類され、刺激により作動するためコリン作動性受容体とも呼ばれています。
ムスカリン受容体(mAchR)は、代謝調節型の受容体でGタンパク質共役受容体(GPCR)の一種です。
神経終末に存在し副交感神経の効果器の活動を制御します。ムスカリン受容体は、M1~M5タイプに分類され、それぞれの受容体に非選択的に作用する薬と選択的に作用する薬が存在します。
ムスカリン受容体の遮断薬は、抗コリン薬と呼ばれ商品名:アーテン、アキネトン、トリモール、パーキン、ピレチア 、コリンホールが販売されています。

Braak仮説
2003年 臨床病理的研究で発表した、Heiko Braak(ドイツの病理学者)のBraak仮説。
抗α-シヌクレイン抗体を用いて高齢者の中枢神経系におけるLewy小体(レヴューしょうたい)の分布を詳細に検討。まず嗅球に出現、迷走神経背側核(延髄)、視床と、その後、下部脳幹(橋)、中脳黒質、扁桃体へ上行進展して、さらに前脳基底部(basal forebrain)、側頭葉皮質、大脳新皮質へと上行拡大して、運動症状、精神症状など様々な非運動症状に関係すると考えられている。
嗅粘膜と腸管の上皮から病原体(neurotropic pathgen)が侵入して、Lewy小体を形成してパーキンソン病を起こすと言う仮説。

オートファジー
Autophagyは、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つで、タンパク質分解には、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジーがあります。
細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与しています。

ユビチキン・プロテアソーム
Ubiquitinは、アミノ酸からなるタンパク質で、他のタンパク質の修飾に用いられ、異常なタンパク質を細胞から分解、除去、DNA修復、翻訳調節、シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わる重要な役割を持っています。
ユビキチンにより標識されたタンパク質をプロテアソームで分解をユビキチン・プロテアソーム システムと呼ばれています。





PDと新手法遺伝子治療

PDと新手法遺伝子治療 (2015年08月13日 日経新聞記事)抜粋・編集

自治医科大学で臨床研究を始めた村松慎一特命教授らがパーキンソン病(PD)6名に対してドーパミン合成に必要な酵素「AADC」を作る遺伝子を脳に入れて症状を改善させた。
アデノ随伴ウイルスというウイルスにAADCの遺伝子を入れて注射すると、ウイルスが細胞に感染し遺伝子を送り込む。細胞内で遺伝子が働いて目的の酵素を作る。病気を起こさず染色体を傷つけることもない。神経細胞に感染しやすく、10年以上遺伝子の効果が見込める。

07~08年にPDを発症して5年以上たった51~68歳の6人に投与。運動機能と関係が深い脳領域の線条体の被殻部分に、AADC遺伝子を入れたベクターを3000億個注入した。4人は症状が改善し、3人は現在も存命だ。
ドーパミンの生成に関連したほかの遺伝子と組み合わせ、効果を高める方法も計画している。通常の注射で遺伝子を神経細胞に届ける方法や、遺伝子が神経細胞で働きやすくする技術も開発。

他の疾患では、運動をつかさどる神経細胞の死滅などにより全身が動かなくなっていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して、18年にも治験を始める他、癌治療、アルツハイマー型認知症も視野にいれる。
遺伝子治療が白血病などかつて問題になった副作用を起こすリスクが消えたわけではないが治療方法の選択肢は確実に増えた。
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 ドーパミン量をコントロール

ドーパミン量をコントロール (2015年08月23日)

少し気になる記事が有ったので紹介。(抜粋、編集)

ドーパミンと老化の関係は極めて密接で、私たちが10歳年をとると、平均して10%くらいのドーパミン・ニューロン(神経細胞)が死ぬといわれています。
ドーパミンが過剰に出ると逆に疲弊してしまい精神的に不安定な状態になる。ドーパミン過剰が続くと脳が判断機能を失って幻覚や幻聴など、さまざまな異常行動を引き起こすこともある。
ドーパミンは動機に関連して活動する報酬系ホルモンなので、『何かをやったら何かを得られる』『こうすると楽しいことがある』と、脳が学習する事で着実に増やすことができる。たとえば、ひと仕事をした後、スイーツを食べるとか、好きな音楽を聴くとか、好きなテレビ番組を見るとか、なんでもOKです。
気乗りのしない事と楽しい事を組み合わせると効果的だそうだ。
また、ウォーキングはいろいろな意味でおすすめですが、歩くと体内のカルシウム代謝が向上し脳にカルシウムが供給されることでドーパミンが出やすくなるという報告もあります。
初めての体験がドーパミンが出しやすくする。今まで行ったことのない温泉や知らない土地を旅するのもおすすめとの事。

ドーパミンが低下すると体が固縮し、やる気が失せ、喜びを感じなくなり物事に対する関心が薄れ、世の中で何が起きていても『どうでもいいや』という感覚になります。ハーバード大学の動物研究でも、ドーパミンが出ない状況にすると、それ以前に好んでいたことをやめてしまうことが確認されていますとハーバード大学医学部の根来秀行教授が述べられた。

根来秀行 教授:ハーバード大学医学部在籍。内科学、睡眠医学、腎臓病学、抗加齢医学、など多岐にわたり活躍する医学博士。専門とする抗加齢医学の中でホルモンの研究。




 所見が大切

所見が大切!! (2015年04月06日)

はじめに
入院中に起った出現症状の事で、大学病院の主治医3名の中で議論になり結論が出なかった出現症状がある。
銘記しないといけないと思い紹介する。
患者はパーキンソン病(PD)発病して9年目です。薬の調整で入院。症状は、体を意志により動かせる状況(ON)と体を動かせられない、まばたきも出来ない(OFF)が出現している。
服薬時間は、2時間置きの頻回投与。3時間おきに服薬すると2相性のOFFが出現する。しかし、1回目~3回目まで服薬してもONと成らない。7回目の服薬してもONとならずOFF状況は、体の痛みで うめき声をあげ、呂律も悪く何を言っているのか聞き取れにくい。痛みを訴える場所は、下肢、お腹、胸。

出現症状
下肢:右足首が反れる、両足指が内側に巻く不随意運動、火であぶられたような痛み。
お腹、胸:筋肉を無理やり延ばされたような痛みを訴える。

S・N主治医の所見
下肢、お腹、胸は筋固縮によるジストニア症状で起こる痛み。

T主治医の所見
下肢に対しては筋固縮によるジストニア症状で、お腹、胸で起こる痛みは感覚障害の痛み。

介護者の意見
T主治医の所見を聞くまでは、S・N主治医と同じであったが、T主治医の所見が正しいと判断。
PDの出現症状は多岐にわたるので、冷静に判断する事が大切と実感する。また、
中枢神経系で起こっているのか??、末梢神経系で起こっているのか??、どの脳部位で起こっているのか??、どの神経伝達物質が関与しているのか??出現症状より推測、判断し所見が求められるので
過去の出現症状・服薬内容・服薬時間・問診・所見が大切。

T主治医の所見を聞き、家内に対しての対応が変わりました。
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