パーキンソン病(PD)を患い薬物対症療法にて服薬をスタートしますが、初期には服薬量、種類は少なくて効果が表れますが、進行に伴い服薬量、種類が多くなります。PDの症状なのか副作用の症状なのかが理解しにくくなります。また、食前、食後、食間での服薬にも効果が変わってきます。
最近、検査機器の進歩により細胞内での神経伝達物質の産生量も把握できるようになってきました。検査と問診により適正な投薬量の判断が以前より適切に行えるようになりましたので紹介したいと思います。
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リファンピシン(肺結核薬が!!)リファンピシン (Rifampicin)大阪市立大学 医学研究科 脳神経学 准教授 富山 貴美らのグループは、抗結核薬であるリファンピシンに認知症を予防する広い作用があることを世界で初めて突き止め、2016年3月29日(火)に英国の神経学雑誌Brain に研究発表。 結核薬のリファンピシンをアルツハイマー病や前頭側頭型認知症のモデルマウスに1カ月間経口投与すると、 脳のオリゴマーが減少し、シナプスが回復して、記憶障害が改善されました。 アルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症、レヴィ小体型認知症の原因タンパク質とされるアミロイドβ、 タウ、α-シヌクレインであることがわかっています。これらのタンパク質が脳内でオリゴマーを形成し、神経 細胞の機能を障害することで病気が発症すると考えられています。 結核やハンセン病などの治療に使われてきた抗生物質リファンピシンに、アミロイドβ、タウ、α-シヌクレインのオリゴマー形成を抑える作用があることを発見。 用語解説 オリゴマ―: 化合物で分子量が1,000以下程度の物質。 アミロイドβ: 蛋白質で老人班の主要構成物質。アルツハイマー型認知症の原因物質の1っとされている。 タウ: 蛋白質で中枢神経細胞に存在する微小管結合蛋白質の一つ。アルツハイマー型認知症の患者の脳には、老人斑とともに、異常にリン酸化されたタウ蛋白質の沈着物(神経原線維変化)が見られる。 α-シヌクレイン: SNCA 遺伝子によって作られた蛋白質(アミノ酸140残基により) |
アディポネクチン(糖尿病薬が!!)アディポネクチン (Adiponectin)東京医学総合研究所 パーキンソン病プロジェクトの橋本款 研究員、関山一成 研究員らが米国科学誌「Annals of Clinical and Translational Neurology」に2014年7月 研究発表。 糖尿病薬に使われているアディポネクチンがシヌクレイノバーチの病態に関与している可能性があると示唆。 シヌクレイノパチーに対するアディポネクチンの効果をシヌクレイノパチーモデルで確かめました。α‐シヌクレインを発現させた培養細胞(B103神経芽細胞)において、アディポネクチンは代謝制御において重要な役割を担っているAMPキナーゼを活性化させることで、α-シヌクレインの凝集を抑制しました。また、様々な神経毒性に対しアディポネクチンが神経保護的に作用することがわかった。さらに、α-シヌクレインを発現したトランスジェニックマウス(αSTg)に対して、アディポネクチンを長期間鼻粘膜投与することにより、α-シヌクレインを発現したマウスの神経病理や運動機能試験の成績が有意に改善する事を観察。 用語解説 アディポネクチン: 脂肪細胞から分泌される分泌蛋白。作用は、インスリン受容体を介さない糖取り込み促進作用、脂肪酸の燃焼、細胞内の脂肪酸を減少してインスリン受容体の感受性を上げる作用肝臓のAMPキナーゼを活性化させることによるインスリン感受性の亢進、動脈硬化抑制、抗炎症、心筋肥大抑制。 シヌクレイノパチ-: リン酸化したα-シヌクレインが脳内に蓄積する疾患で、パーキンソン病、レヴィ小体認知症、多系統萎縮症などの神経変性疾患。 α-シヌクレイン: SNCA 遺伝子によって作られた蛋白質(アミノ酸140残基により) AMPキナーゼ: AMP活性化プロテインキナーゼ(AMP-activated protein kinase)の略で、アデノシン-1-リン酸(Adenosine MonophosPhate)のこと。細胞内で糖や脂肪を燃やすとできる物質です。 AMPキナーゼは筋肉を動かすことで活性化され、筋肉に蓄積されている糖や脂肪を燃焼。 AMPキナーゼが含まれている食品、トマトの皮に含まれるナリンゲニンカルコン、ブドウ種子に含まれるプロシアニジン、カカオ豆に含まれるプロシアニジン、お茶などに含まれるカテキン、ブルベリーなどに含まれるアントシアニン。 |
ドラッグ・リポジショニング既存薬効果の再発見 (Drug repositioning)ドラッグ・リポジショニングをご存じだろうか??。 既存の治療薬を見直し別の疾患に有効な薬効を再発見して治療薬として活用すること。 既に安全性や薬物動態の試験が済んでいるから、いくつかの試験をスキップできる。 近年、関連論文数が飛躍的に増えてきている。 (2009年9本、2010年15本、2011年27本) 事例としては、てんかん治療薬(ゾニサミド)がパーキンソン病の症状に効果が確認され承認された。 今までは偶然発見されることが多かったが、最近では、遺伝子の発現量に着目され対象疾患を絞り込むようになり拍車がかかっている。しかし、目的とした効能以外での副作用の可能性も捨てきれない。 遺伝子と創薬の関係 体の細胞の中には約2万数千の遺伝子があり病気になると遺伝子の発現が増減します。 この発現量の違いが病気の本質で、遺伝子の異常な発現を元に戻すのが薬と理解することができます。 (病気になると遺伝子の発現が極端に増えたり減ったりする)遺伝子の発現に着目して発現量を次世代シークエンサーで測定して正常な細胞とガン細胞ではどこが異なるかが判ってきます。このデーターをスーパーコンピュターで解析を行いどの遺伝子が健常者と発現量が異なるかを見ることにより原因遺伝子の特定して原因遺伝子に働く薬(化合物)を発見する。 遺伝子発現のデーターベース ”コネクティビティマップ(ConnectivityMAP)” により発現を抑制する候補の化合物が判り臨床試験を経て治療薬となる。 用語解説 コネクティビティマップ: 1309種類の化合物(薬の元)がどの遺伝子の発現に関わっているかを公開したサイトでハーバード大学などが運営。 |
治療健康維持領域治療のための健康維持領域 (Therapeutic-window)パーキンソン病(PD)を発症して当初は薬の効果が長時間ありますが、服薬後約4〜7年目には効果を十分に感じる事が少なく成ってきます。この症状をWearing-off(日内変動)と呼ばれています。 Wearing-offが起る原因は、脳内の黒質から線条体へのドーパミンを作る神経細胞の減少と考えられており、神経細胞の絶対数が減少する事によりドーパミンの保持能力が減少する事により起こるとされています。 不足したドーパミンを補充するためにL-Dopa(レボドバ)を服薬するのですが、服薬後胃で消化され小腸で吸収、肝臓、静脈、動脈を通り脳の神経細胞に送られますが効果が現れるまでに時間差が出てきます。また、供給されるドーパミン量が多すぎても少なすぎてもOFF状態となるDiphasic-Dyskinesia (デファシック-ジスキネジア)が出現します。 Therapeutic-window(ゼラピエック-ウインドウ)とは、治療のためのON維持に役立つ領域の事の意味で使われています。現在の医学ではTherapeutic-windowの領域を広げる事は出来ません。PDの進行と共に領域が狭くなって行きます。今後の研究、治療薬が望まれます。 |
PD薬は正直PD薬は正直!! (2015年05月08日 Report)はじめに 薬の服薬は薬の種類により、食前・食後・食間等がありますが、2時間置きの頻回投与になると食事を取る時間が大切に感じる事が多い。 PD薬を服用して4年目頃より日内変動(wearing-off)に悩まされる。1回の服薬量が多いと安静時振戦が出現しON(体を動かす事)、服薬量が少ないとOFF(体を動かす事が出来ない)となる。また、服薬タイミングにより薬の効果が現れるまで時間に差が発生する。 懸濁液・経口剤による効果出現時期の違い
何故?、効果出現時間の差異が起るか?? PD薬は服薬して小腸から吸収され ⇒ 肝臓 ⇒ 血液で脳に運ばれ神経細胞でドーパミンを生成して軸索終末からシナプス間に放出 ⇒ 樹状突起でドーパミンを受け次の神経細胞に伝達します。この過程でどこかで遅延が起っていると考えられますが、懸濁液と経口剤で効果の差異が発生する事を見ると薬の成分が胃 ⇒ 小腸へ運ばれる時間に遅延が有ると考えられます。また、知っておきたいことは、薬の血液中濃度が一定以上にならないと効果を発揮されないことです。飲む量を増やすと血中濃度が必要以上に高くなり、薬が効きすぎて副作用を引き起こすおそれがあります。逆に飲む量や回数を減らすと、血中濃度が低くなりすぎて薬の効果が現れません。大切な事は、一定の血液濃度を保つことで薬の効果が得られるので、自分の体の血中濃度半減期を知る事が大切です。 下記にデュオドーパ(Duodopa)治験者の体験を記します。 「Duodopaの治験参加者です。現実にお腹に穴を空けてチューブからゲル状の抗パ薬を直接腸に送っています。確かにポンプは意外と重いし、カートリッジは冷やして保管せねばなりません。チューブの通る穴も時々反乱をおこします。ただ、日中は薬のことを考えなくて済むとか、日内変動が劇的に減るとか、ほぼベストオンでいられるとか。確かに病気が治る訳でも症状が後退するわけでもありませんが、脊柱管のの影響さえなければ歩行は相当楽になります。今、治験に参加して1年を経過したころです。 1日分。16時間しか使えない決まり。朝起きたらこれをポンプに装着して、自分の身体のチューブの先端部分とジョイントして、ポンプのスイッチをいれます。朝は体が動くようになるように、多めの量が投与されるようにプログラムされています。自分の朝の投与にかかる時間は約8分間、それが体に回って、立って歩けるようになるまで約10分から15分、日によって違います。ニュープロパッチ9mgも貼っていますが、これだけでは体のバランスが取れず、ほとんど歩けません。だから「デュオドーパ」が回るのをひたすら待ちます。 この起動にかかる時間はその日の睡眠時間が大きく関わるような気がします。 薬の吸収を考え、また、L-Dopaの血中濃度の維持が大切と理解。 薬物療法での重要な事 PD病と成り初期は薬の効果の持続時間が長く1日2〜3回で快適に過ごす事が可能ですが、日内変動(wearing-off)症状が出現する4〜7年以後には薬の調整(服薬タイミング・服薬量)がONを継続させる事が大変重要になってきます。 服薬時間が15分遅れただけでNo-on(次の服薬後までONにならない)、Delayed-on(服薬後ONになるまで時間がかかる)、onでも調子が悪いとの可能性があります。また、食事の時間が不規則、食事の量が多い、消化に悪い食事を取る、急激な運動をする、大量の汗をかく事により薬の効果が期待できない事があります。 まず、体調・胃腸管理、薬の血中濃度を一定に保つ事が大切です。 ・規則正しい生活リズムを心がける。 ・服薬時間の順守。 ・水分補給に気を付ける。 ・軽い運動を心がける(約20分間位の散歩をする)。 ・人と会話するように心がける。 ・食事は胃に負担のかからない食物をとり良く噛む。 ・暴飲暴食はしない。 ・症状日誌を付ける。 (PD薬の効果継続時間、服薬して効果が現れる時間、出現症状、出現時間の把握)。 ・主治医と体調の変化等、「症状日誌」内容を話し合い対症する。 以上 |
認知症の薬認知症の薬パーキンソン病(PD)を患い7年ごろより認知症??健忘症??と思われることが多々ありました。調べてみるとパーキンソン病患者は、高率に認知症を合併する。認知症を発症するリスクは健常者の約5〜6倍と考えられている。パーキンソン病患者の40%が、認知症を合併しているとの報告があり、8年間の追跡調査で、78%が認知症を発症との報告があり、パーキンソン病に認知症が伴う( Parkinson's with dementia:PDD ) と言われていることが分かったが、PDDと診断されたのは発症して9年後。予備知識として”認知症薬”を紹介したい。 認知症の薬の種類 コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬、抑肝散(よくかんさん)、イクセロンパッチが用いられています。 ・コリンエステラーゼ阻害(ChEI)薬の種類
・NMDA受容体拮抗薬(アマンタジン) メマンチンもランダム化比較試験(RCT)が行われており有効という結果が出ている。また、嚥下障害にも効果が有ると示唆されている。(大脳辺縁系、前頭葉機能の活性化作用) ・抑肝散(よくかんさん) 漢方薬も神経症や不眠症に有効性が有ると示唆されている。 (セロトニン神経系のバランスを回復、グルタミン酸神経系の過活動を防止)。 腹直筋の緊張、痙攣、情緒不安、不眠、自律神経失調症、血の道症、進行したアルツハイマー型認知症で起こる妄想や、徘徊(はいかい)、暴力などの抑制にも効能がある。 認知機能を低下させやすい薬剤 ・抗パーキンソン病薬、 ・抗てんかん薬、 ・循環器病薬(降圧薬、抗不整脈薬、利尿薬、ジギタリス) ・鎮痛薬(オピオイド、NSAIDs)、 ・副腎皮質ステロイド、 ・抗菌薬、 ・抗ウイルス薬、 ・抗腫傷薬、 ・泌尿器病薬(過活動膀胱治療薬)、 ・消化器病薬(H2受容体拮抗薬、抗コリン薬)、 ・抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬) 治療薬に注意 認知症の一般的な薬にドネぺジル(商品名:アリセプト)があげられますが適切に使えば効果的な良薬ですが、アルツハイマー型認知症以外の認知症に使うと、逆に症状を悪化させる危険性が大きいと指摘する専門医 もいます。 (米国食品医薬品局(FDA)は、アリセプトを脳血管性認知症への効能追加を承認していません)悪化させる症状としては、怒りっぽい症状、暴言、暴力が出現する事がある。 レヴィ小体型で、手足の関節がスムーズに動かない「筋固縮」のある患者に、アリセプトだけを処方すると歩行障害、寝たきり、嚥下障害につながる可能性が大きいと指摘されています。また、幻覚や妄想などの精神症状が悪化したと指摘する専門医もいます。 参考文献:認知症疾患治療ガイドライン2010、コウノメソッドの抜粋、及び改編。 |
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コムタンのCDSPD薬「コムタン」のCDSに付いてコムタンは、レボドパ(L-DOPA)との併用で用いる。 レボトパは、血液脳関門を通過しないので、それ自体では抗パーキンソニズム効果を有さないが、末梢系でL-DOPAを代謝するCOMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)を阻害することで、末梢でのL-DOPAの血中半減期を延長させ、wearing-off現象を改善。 コムタン自体の半減期は約51分。日本国内で実施されたwearing-off現象を有するパーキンソン病患者対象の臨床試験において、コムタンはプラセボ群と比較し、L-DOPAの血中半減期を100mg群で約30%、200mg群で約50%延長した。しかし L-DOPAの血中濃度自体を上昇させることはない。また L-DOPA/DCI配合剤にプラセボ群とコムタンを8週間併用すると100mg群、200mg群ともON時間を1日平均1.4時間延長し、プラセボ群(0.5時間の延長)に対し有意なON時間の延長効果を認めた。重要なことはコムタンは全例で有効ということではなく、レスポンダーが7割、ノン・レスポンダー3割であることだ。ノン・レスポンダーを除きレスポンダーに限定するとON時間の延長は1日平均2時間台に延びる。ノン・レスポンダーが存在する理由については不明であるが、COMT遺伝子の多型のせいや、すでにドパミン受容体に可塑的変化が生じてしまっている可能性が考えられる。 また 有害事象発現率はプラセボ群70%、100mg群73%、200mg群86%であった。つまりON時間の延長効果は100mg群、200mg群とも同等ながら、有害事象発現率は200mg群で有意に高率。海外では200mgが推奨されているものの、日本では1回100mgの使用が推奨されるということになる。 具体的な副作用としては、ジスキネジア、嘔気といったドーパミン過剰状態に伴うもののほか、着色尿(赤褐色)、下痢、腹痛、便秘などが見られる。 コムタンを併用することで分解を遅らせ、3時間ごとに内服することができれば、ドパミン受容体の刺激に波がなくなり持続的な刺激(continuous dopaminergic stimulation:CDS)が可能になる。 このCDSを実現できれば、L-DOPAの大きな問題であるジスキネジアやmotor fluctuationを引き起こさないで済むのではないかという期待できる。また 3時間ごとの内服で、4〜5回以上の場合CDSの効果が変わらないとの指摘もあります。 |
コムタン錠100mg |
PD薬による副作用と脳部位の予測PD薬による副作用と脳部位の予測 (平成26年03月11日 Report)パーキンソン病発病に伴い対処療法薬を処方され服薬するが、服薬後4〜7年位で薬の副作用に悩まされることが多く、増量、変更等により、その都度悩まされることが多い。薬の副作用化?、パーキンソン病の出現症状?が解らなく成る事がたびたびあるので症状の分類、脳部位からの症状?を把握、推測してみた。 (被験者は女性、52歳で発症し9年目の出現症状) 注)パーキンソン病患者により出現症状は異なるので参考としてください。 まとめると, ・薬の副作用と考えられる症状: 遅達性ジストニア、傾眠、REM睡眠異常、構音障害、流涎、感覚障害、幻視、幻聴、妄想。 ・PDの出現症状と考えられる症状: 寡動、無動、姿勢反射、顔面硬直、記憶障害、認知障害。 ・副作用、PD症状と両方考えられる症状: 遅発性ジストニア、振戦、嚥下障害、構音障害、流涎。 となる。経験則からPD出現症状を緩和するためにL-Dopaを500mg/日服薬するとOFF時の遅発性ジストニアが強くなる。少なくすると寡動、無動の時間が長くなる。また、L-Dopaを頻回投与すると二相性ジスキネジアの回数が多くなり結果的に累計ON時間が短くなる。 ドーパミンアゴニストを増量すると幻視、幻聴、傾眠、突発性睡眠、REM睡眠異常が出現。 余談だが、α−シヌクレインの凝集を抑えるとされるピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone、PQQ)を多く含まれる食べ物を約2ヶ月間摂取し継続したら、二相性ジスキネジア、NO-ONの回数が徐々に少なく無ってきたしてきた。 中鎖脂肪酸を摂取する事で記憶力の改善が見られる。 また、眠剤(睡眠導入剤)の服用をやめてから意欲が見られるようになってきた。 (寝つきが悪い時は、頓服でリーゼ錠を5mg服薬) 結論は、L-Dopa(ドーパミン補充薬)ドーパミアゴニスト(受容体刺激薬)を症状に合わせた量を服薬する事と、ピロロキノリンキノンを食べ物から摂取、中鎖脂肪酸を摂取する事が症状の進行を抑え、現状維持、症状の改善に効果があると考えられる。 (この事を証明する事が出来れば孤発性PD患者に有益な情報になると考えます)
被験者情報。 発症前の体調: 低血圧、肩こり症、体温が低い、便秘症、頭痛もち。 食べ物: 好き嫌いは特にないが、鰻丼、たこ焼き、お好み焼きが好み。 性格: 温和、まじめで責任感が強いが、ひょうきんな所がある。 既往症: ろく膜炎(子供の頃)、子宮筋腫、PD発症後S状結腸癌(良性) その他: 血族にパーキンソン病になった方は無い。 |
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PD薬の維持量PD薬の維持量に付いて(パーキンソン治療ガイドライン2011よりの改編)抗パーキンソン病薬は、初期は中枢性副作用は出にくいが、進行していくにしたがって、薬用量が過剰、過少であっても、ドーパミン受容体刺激が間欠的でもジスキネジアのリスクが高まる。異常となっている神経回路網の正常化が達成できるような維持量を使用する。 現在の治療薬の用量は種類、これまでの治療歴、副作用発現歴、年齢、認知症の有無により異なります。 ・L-dopaは、症状改善度、有効率が他薬剤と比べて最も高いが、血中半減期が1時間強と短く病気の進行により作用時間が短くなる欠点がある。 ・ドーパミン アゴニストは、L-dopaと比べて作用時間は長いが、ドーパミンの換算量は非常に低く副作用頻度は高い。 ドーパミン アゴニスト: 平均用量投与改善率は50〜60%。平均用量まで増量しても効果が明らかでない場合は、他のドーパミン アゴニストに変更する。ドーパミン アゴニストでは効果安定までに2週間程度が必要です。
L-dopa: 一定量を使えばほぼ100%の患者で効果が期待できるが、半面Wearing-offやジスキネジアが発現しやすい欠点がある。この欠点を最小限にするためには、ドーパミン アゴニストなどの他の薬を併用し対応しL-dopaの1回量や服薬回数の調整が必要です。 脳内ドーパミンの持続を延ばすMAO-B阻害薬の併用、L-dopa血中濃度半減期を延ばすCOMT阻害薬(運動症状改善)の併用を考慮に入れる。 COMT阻害薬は、L-dopaを1日4回以上の場合、午後から夕方にかけて血中濃度が上昇する傾向性があこと、MAO-B阻害薬併用の方が同一のL-dopa用量では、より高い効果が発現する。 MAO-B阻害薬: L-dopa使用早期からの併用が、進行期から併用に比べ副作用の発現の可能性が低く、L-dopaの用量を節減できる点では有利と考えられる。 Wearing-off対策として投与する場合、ジスキネジア、幻覚、妄想の発現や増悪など生ずる事がある。その時でもMAO-B阻害薬を中止のみで解決される事に留意。 COMT阻害薬: L-dopaとエンダカポン100mg同時服薬により血中濃度半減期を約33%延長できる。1日に服薬する回数が4回以上の場合、1日の後半に、L-dopaの血中濃度ピーク値が上昇しジスキネジアの増悪や幻覚、妄想が生じやすくなる。対策としては、L-dopaのの服用間隔を延ばすか、服薬量を減量するか対応が必要です。 抗コリン薬: 振戦に対して追加併用するが、L-dopa服用を遅らせる一つの方法として位置づけられる。維持量や投与期間は6mg/日未満、2年を越えない様に注意する。 アマンタジン: L-dopa投与開始を遅らせる意図、ジスキネジア対策として投与を考えられるが、使用に関しては、高齢者における精神症状、腎機能低下患者へは注意が必要。 その他: 効果、副作用を見ながら行うのが原則である。L-dopa、ドーパミン アゴニストの吸収は個人差があり10倍程度あるとされている。また、食餌(しょくじ)や併用薬にとって影響される。
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平成25年2月から2週間で 薬調節にチャレンジ。
(ON時間の延長、病状回復のきざし)
病状が徐々に悪化の傾向が(ON時間の減少・副作用、遅発性ジスキネジアが強くなってきた)担当医に相談するも取り組む姿勢が見られないので、患者と共に薬り調節にチャレンジ。服用中の抗パーキンソン薬 3種類の薬の服用時間、服用量を約2週間で 調節。結果、思うより症状が良くなり安堵(2月病状日誌 参照)。具合の良い日には、朝食を作ってくれたり、掃除・洗濯をしてくれたり、一緒に買物に出かけたり、夕食の手伝いが出来る様になった。
COMT阻害薬の服薬量が半減で、調節前よりON時間が延びた!!安定するまで気を許せない。
血中酸素濃度計血中酸素濃度計!!(パルスオキシメーター)
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ドーパミン産生FMT-PET検査ドーパミン産生・FMT-PET検査パーキンソン病では、黒質-緻密部のドーパミン産生細胞の変性によりドーパミン産生量がピーク時(20歳頃)より20%減り発症する考えられている。では、ピーク時にどの位産生されていたかは現パーキンソン病患者で実証する事が困難ではあるが、ピーク時頃、几帳面、心配性、慎重派、水分補給は少ない、運動嫌い、便秘症の傾向性が有ったとの性格保持者が40-50歳代にパーキンソン病を発症すると指摘している研究者もいる。 さておきFMT-PET検査で、現ドーパミン細胞の産生量が検査できる事は大変興味深い事である。 下記、概略を記したが、この事により投薬治療の予測、症状の予測等が可能となり対症、生活環境の準備にも役立つのではないかと推測できる。 今後も検査方法等が進むように望みたい。 FMT-PET検査概略とヤール1度の測定例 「 アミノ酸から神経伝達物質の産生経路 」で述べたが、黒質-緻密部で神経細胞の樹状突起を伸ばし線条体へ放出される。産生経路でチロシン水酸化酵素の働きでレボドパになり, ドーパ脱炭酸酵素によりドーパミンになる。線条体に突起を伸ばしているドーパミン細胞がどのくらい残っているかはドーパミンの代謝を見ることで可能になる。 ドーパ脱炭酸酵素は、線条体に伸びた突起の先端部分に存在し、フッ素ラベルしたチロシンを患者さんに注射し,ドーパ脱炭酸酵素によってチラミンを生成させ、このチラミンをPETで検出すると、ドーパ脱炭酸酵素がどのくらいあるか、すなわち黒質から線条体に伸びた突起がどのくらい残っているかが判ります。 線条体は精神系の尾状核と,運動系の被殻とに分けられます。「 大脳基底核のお話し 」(線条体を参照)健常の方はFMT-PETで尾状核も被殻もよく染まり、ドーパ脱炭酸酵素が存在する。 (黒質のドパミン細胞の突起が伸びてきているのが判ります) ヤール1度は片側だけに症状のある初期の段階。 ヤール1度の患者さんでは、症状のある反対側の被殻の後ろ側から、FMT-PETで染まりが悪くなります。 右脳は左半身、左脳は右半身を支配していますので、症状のある対側被殻のドーパ脱炭酸酵素の活性は20%割っています。(パーキンソン病の重症度はヤールの分類で示されます) 一方,症状のない対側被殻はFMT-PETである程度染まり、ドーパ脱炭酸酵素の活性が20%以上あることを示しています。 精神系の尾状核は、ヤール1度の患者さんでは左右とも良く染まります。 発症後10年経過した患者さんでは,両側被殻に加えて尾状核の染まりも低下しています。 運動系のみならず精神系のドーパミンも減っていることを示している。 |
ヤール重症度 ステージ | 生活機能度 | ||
1 度 | 片側上下肢の静止振戦・固縮障害のみで、 機能障害は軽微。 |
T | 日常生活は1人で可能。 |
2 度 | 両側障害で、四肢、体幹の静止振戦・固縮 と姿勢異常、動作緩慢。 |
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3 度 | 歩行障害が明確となり、方向転換や 押された時の不安定さなどの姿勢反射障害 がみられるが、身体的には、独立した生活 が行える。 |
U | 身の回りの事は何とか出来る。 外出、通院は、部分的介助が必要。 |
4 度 | 無動が多くなり起立、歩行が出来ても 障害が強く、介助を要する事が多い。 |
日常生活の大半は介助が必要となり、 通院も車でないとできない。 |
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5 度 | 自分で動くことが出来ないため、 寝たっきりになり、 移動は車椅子などにより介助のみで可能。 |
V | 日常生活は、介助なしでは出来ない。 |
UPDRSUPDRSスケール(ヤール重症度分類より詳細な分類法)UPDRS( Unified Parkinson's Disease Rating Scale )は、1987年に作られたパーキンソン病統一スケールです。パーキンソン病を総合的に評価する基準として、世界中の研究者や医師に広く良く用いられています。ヤール重症度分類に比べてはるかに細かく評価することができます。 42項目を基本的に5段階に分けて点数で評価。パーキンソン病の重症度を点数で表すことができます。 薬の治験の際の効果の評価、手術成績の評価の際などにその前後の症状の程度を点数で表して比べることができるので利用されています。 1.精神機能、行動、および気分に関する評価。 2.日常生活動作に関する評価。 3.運動能力検査に関する評価。 4.治療の合併症に関する評価。 UPDRSスケール(参考) |